複素対数関数
複素対数関数
は,の偏角を返す関数です.
ですが,一般に複素数は偏角を増やしたり,減らしたりしても元の複素数と変わりません.
つまりの偏角は?と聞かれても,答えは無限個あります.
正確に言うと,の解はの自由度があるということです.
ということは,冒頭の複素対数関数は無限個の値を返すことになります.
このような関数を多価関数と呼びます.
では,なぜ対数関数の複素数バージョンは,こんなにも扱いにくそうな形になってしまうのでしょうか.
導出
複素対数関数の定義は,以下のように考えるのが自然です.
とすると,
という等式について,絶対値と偏角を比較しましょう.
なので,両辺対数を取って,
よって
以上より,
sinc関数の広義積分 複素積分編
複素積分を用いて,以下を示します.
導入
次の複素積分を考えましょう.
コースは以下の図のの和です.
細かく言うと,たちは以下のように定義しています.
経路の向きはの増加方向です.
(1)の右辺
複素関数 は 全域で正則です.よって被積分関数 は原点 のみが特異点で,それ以外の領域 では正則となります.
コースには原点が含まれていないため,式(1)の右辺はになります.
ここで,コースとコースは実軸上なので,実はただの実積分です.
ここで,最後に積分値を文字で置いたのは
と表されるからです.
これは目標の式と同じですね.
この項では以下の重要な定理を用います.
を曲線の長さ,上で のとき,
この定理は,以下の実積分の定理
のとき,
を複素積分に拡張したものになっています.
では,
にこの定理を適用してみましょう.
上ではと表されるので,
です.
また,を用いてと表すと,
より,
よって定理より,
ここで,のときなので,
です.
つまり,
がわかります.
は時計回りで計算しにくいので,反時計回りの
を使って考えます.
もちろん,
です.
複素指数関数の定義を確認してみましょう.
これを被積分関数
に代入してみます.
について場合分けするために,
と置きます.
上ではと表されるので,
なので,
の場合
の場合
以上より,
よって,
以上のことをまとめます.